1975 銅版画ー2

 
イメージ 1
 1975
 36X30cm
 銅版画
 

 
イメージ 2
 1975
 27X27cm
 銅版画
 

 
銅を腐食するのに使っていたのは硝酸だった。劇薬なので現在では酸化第二鉄を使うことが多いようだ。確かに硝酸と銅が激しく反応すると刺激臭とともに黄色い気体が立ちこめることもあった。体に悪そうだと思ったが版画室ではおかまいなしで素手で硝酸液から銅版を取り出していた。腐食止めを溶かすのは石油やベンジンで取扱注意のものばかり。硝酸やベンジンは買うのにハンコが必要だった。今も思い出すのは上田三小路にあった間口一間ほどしかない古い小さな事務所の鎌田商会。硝酸はそこに買いに行っていた。もうお爺さんに近いおじさんがやっていて農学部などに薬品を納入していたのかもしれない。湿っているようで埃っぽいような、古ぼけていずれ消えていきそうな事務所の佇まいは今ではお目にかかることはできない風情があった。在学中に鎌田商会は無くなり、硝酸購入は上田通りにある北星化学へと変わった。